山葡萄のつる取り

山葡萄の蔓を刈る

 

蔓穫りのチャンスは

年1回、2週間。

 

山葡萄のツル採りは、毎年6月に行います。

梅雨の長雨のあと、水分をたっぷり吸い込んでふやけた状態のツルは、この時期だけ人の手でくるくるとキレイに向くことができるからです。

その採取期間は、とても短く1年のうち2週間しかチャンスはありません。

山葡萄作家である、ゆうはん先生は、1年分の作品に使う大量のつるをこの時期に採取します。

場所は申し上げられませんが、山形の深い森の中と申し上げておきましょう。

蔓穫りは過酷な仕事です

山葡萄のツルに水分がたっぷりしみこんでいる季節は、山自体にも水分を豊富に蓄えている時期です。 

川は濁流となり氾濫気味な急流を越えて行きます。 また、急な斜面が連続する地面もドロドロと頼りなく、足の踏ん張りが効きません。 

採取した、ツルも信じられないぐらいどっしりと重く水分を含んでいます。 だから、本当にこのツルの採取は、過酷な重労働なのです。

しかし、国産の良質なツルは、作品の生命線です。

乱獲で、年々手に入りずらくなっている希少な山葡萄のツル。

山葡萄のツルを使ったゆうはん先生のバックは、いわば「山形の宝物」だと私たちは考えておりますので、毎年、先生と一緒にスタッフ総出でお手伝いに出動しています。


出発は早朝5時。

グネグネと曲がった道を走ること1時間強、ついた場所は木々がたくさん生える山中。

 

まだ梅雨明けしていない蒸し暑い山の中ですが、虫さされやけが予防を兼ねて、全身長袖を着用しなければなりません。

手袋、のこぎり、つたを束ねる紐、蚊取り線香、そしてそれらを入れる籠を腰につけて山道を進みます。

道路から急斜面を下り山の中へ

先生方はすいすいと斜面を下って行きますが、我々は岩や枝に足を取られなかなかすすめません。

山葡萄が自生している場所まで行くのでひと苦労。

さすが名人

ツルをむくのも名人芸

山葡萄を先生が見つけ倒していきます。

ツルといっても直径10センチぐらいのものとなるとまるで木のようです。

丁寧に昨年までの薄い皮を剥ぐと中から綺麗な皮が出てきます。その皮をゆっくり下に裂けないように剥いていきます。

これがなかなか難しい。真っ直ぐに引っ張っているつもりがいつの間にかねじれて裏の方に行ってしまったり、節があるとそこまで綺麗に向けていた皮が裂けてしまいます。まっすぐキレイに向けないと使い物にはなりません。

先生方は節の部分も綺麗に剥いでいきます。

そして剥いだ皮を輪にして束ねていきます。剥いだばかりの皮は水分をたっぷり含んでいるので重く背負うのも一苦労です。

さらに急斜面を登りながら奥へと進んでいきます。

山道もない本当に自然のままの斜面を登ることは容易ではありません。

 

足はガクガク震えて

笑顔が消える

自分が今どこにいるかわからないぐらい山中深くに入って行きます。

そうしながらも山葡萄の木を見つけては蔓を取り続けます。

続ける事約4時間半。

志田先生御兄弟に手伝って頂きながら、採取した蔓を背負い下山します。

上りも大変ですが、蔓を背負っての下りはもっと大変なのです。

足はガクガクと震えはじめて、余裕の笑顔も消えていきます。

疲れからか足は取られ、肩は重さでどんどん痛くなってきます。

でも、「この蔓があの素敵な籠になるんだ!」と気力を振り絞り、ただひたすらに山をおりていきます。

やっと、自分たちの車にたどりつきました。

でも、先生たちは何も無かったように…笑顔。

今年もなんとかこれで作品が作れそうだと話しています。

 

山の恵み。山の宝。

 

仙人のような先生たちをよそに、駐車場にたどりついたスタッフ数名はみな疲れ切り、毎回たおれこんでしまいます。

 

年々、山中深く進まなければ『山葡萄の蔓』は見つからず、蔓を採ることが大変になっているなと実感しつつ、「自然の恵み・自然の宝」に心から感謝を捧げる2日間でした。